Wearist『山口小夜子』水のような透明感//

日本のトップモデル『山口小夜子』

資生堂のイメージモデルとして、昭和の時代にCMで “ミステリアスで美しい画” をお茶の間に送り続けた人。。と言えばきっと誰もが思い出すかもしれない。

1970年代、コレクションモデルと言えば金髪のカーリーヘア、クリクリした青い目の欧米モデルが当たり前だった頃、山口小夜子氏は、黒髪おかっぱ、切れ長の目で日本人形のごとく『美』を表現することに成功した。

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否定する多くの力に屈することなく、彼女は

「ファッションとは、周りからどう思われているかーという観点だけで決めるものではない」という意思を貫いた。

 

「そのままでいい」とサポートしてくれたデザイナーの山本寛斎氏を始め、三宅一生氏髙田賢三氏イヴサンローラン氏等が彼女をミューズとして使用するようになり、世界的なランウェイでトップモデルとして一世風靡。。となる。

 

 

ニューズウイーク誌が選ぶ「世界のトップモデル6人」にアジア人として始めて選出され、フランス人クリエイターSerge Lutens(セルジュ・ルタンス)により、資生堂の広告塔になり、今思うと、かなり早い時代に「世界から見る日本の美しさ」を私たちに伝えている。

 

杉野ドレスメーカー女学院卒の彼女は、スクラップや裁縫、リメイクを施し、いろいろなものを創ることが好きだった。

杉野ドレスメーカー女学院卒の彼女は、スクラップや裁縫、リメイクを施し、いろいろなものを創ることが好きだった。

 

私が今回この展示空間へ行き、山口小夜子氏の生きた軌跡を五感で感じ、身体の中に何かを残したいと思ったのは、きっと、私も少しだけ「世界から見る日本の美しさ」を認識している一人だからなのだと思う。

息子はさらに奥深く認識していて、小さい頃から、例えば、盆栽や日本庭園、忍者、墨絵、武士、剣道。。一緒に鎌倉や京都へ行けば、古伊万里を探し、蕎麦を食す。『THE JAPAN』が好きで、やはり、変わった親子かもしれないが。

 

 

山口小夜子氏は、国際的モデルの活動が落ち着いた後、映画、舞台、クリエーター、パフォーマーとしても活動を広げ、彼女ならではの雰囲気と造形で、ネオクラシックの世界観を表現し、著名な表現者たちとのコラボでも様々な分野で芸術を体現し続けた。

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寺山修司から2000 年代のアンダーグラウンドカルチャーまで網羅した作品や、音、映像、ファッション、文学等が一体化した総合芸術に魅せられる。

寺山修司から2000 年代のアンダーグラウンドカルチャーまで網羅した作品や、音、映像、ファッション、文学等が一体化した総合芸術に魅せられる。

 

そして「その人が在るだけで、周りの空間を一瞬にして変えてしまう存在になりたい」とあるインタビューで話しているが、彼女こそ、まさにそんな存在なんだと思う。

 

実は、昔、私は山口小夜子氏を成田空港で見かけたことがある。

あのままのメイク、黒髪おかっぱで、不思議で幻想的で美しく、しばらく見とれてしまったのを覚えている。

自分を消して、纏うものを生かす・・だから自らをモデルと呼ばず、『Wearist (ウェアリスト)』と呼ぶ彼女は、水のような透明感のある人。

 

本来、クリエイターの思いとウェアリストによって浮き彫りにされた服を私たちは手に入れ、着る。

そこで初めて、着る人の個性と表現力が服に乗り移り、息をし始めるのかもしれない。

服という作品を、ただ着るのではなく、丁寧に着る・・・

そうすれば自分のスタイリングが出来上がる。

 

ウェアリストであった山口小夜子氏の思いを、大切に残していきたいと思った。

 

『山口小夜子 未来を着る人』 ~6月28日(日)

東京都現代美術館(〒135-0022 東京都江東区三好4-1-1)

電話 03-5245-4111 (代表)

開館時間 10:00~18:00

 

RIKA